大判例

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東京高等裁判所 昭和48年(行ケ)83号 判決

一 前掲請求の原因のうち、原発明および本願発明につき、出願から審決の成立にいたるまでの特許庁における手続、本願および原出願の発明の要旨並びに審決の理由に関する事実は当事者間に争いがない。

二 そこで、右審決に原告主張の取消事由があるか否かについて考察する。

さきに原発明の要旨として確定したところによれば、原発明におけるAおよびBの部分は光学像伝送用硝子繊維集束棒製造法の連続した処理工程であり、Bの工程の当初において「硝子管に挿入」されるものが、特許請求の範囲の文脈上、Aの工程において「一端を束ね、その束ねた側から流体を流下して末端まで整然と集束」した硝子繊維であることは明らかであり、普通ならば、Bの工程に移行する段階において、流体が硝子繊維の間に残留し、これがため、硝子繊維がいわば濡らされた状態にあることは必定であるが、成立に争いのない甲第五号証の三(原出願の特許公報)によれば、A工程において用いられて硝子繊維の間に残留する流体をBの工程に先立つて処理すること、または、少くともBの工程において硝子管に挿入される硝子繊維束が濡らされていない状態を許容することについては、原出願明細書中、特許請求の範囲はもとより、発明の詳細な説明にも、その記載がないばかりでなく、かえつて、右説明には、「……各硝子繊維はその水流に沿つて次第に相互に整然と並び、中に介在している破断した硝子繊維は水流によつて繊維束外に流出し、各硝子繊維は末端にいたるまで第二図に示すような蜂の巣状に配列した繊維束となる。この繊維束を流体噴出管から静かに取外して第一図(B)に示すように一端を封じた硝子管内に静かに挿入しながら……」(右公報第二欄二一ー二九行)との記載さえあることが認められ、また、経験則によれば、硝子繊維が濡らされている状態は、Bの工程の実施に格別支障を与えるものではなく、むしろ、硝子繊維を濡らしている流体の表面張力の作用により硝子繊維相互の平行配列が保たれるため、これを硝子管に挿入する処理に役立つものであることが認められるから、以上の点を併せ考えるならば、原発明の要旨は,Bの工程において硝子管に挿入される硝子繊維束について、これを単に整然と集束されているとするだけでなく、原告主張のように、Aの工程で用いられて残留する流体によつて濡らされていると限定しているものと解するのが相当である。もつとも、前出甲第五号証の三によつても、Bの工程当初における硝子繊維束の状態を右のように限定したことの作用効果については、被告主張のように、原出願明細書に記載がないけれども、そのような作用効果は右構成から当然予想されるところであつて、ことさら明記するまでもないところであるから、右明細書にその記載がないからといつて、格別異とするに足りない。

そして、平行に整然と集束された硝子繊維束を硝子管に挿入して加熱軟化しながら延伸する技術が原出願前周知であつたことは原告の認めて争わないところであるが、右技術において、硝子繊維束が、原発明のBの工程におけるように、その前工程で用いられて残留する流体によつて濡らされているものであつて、原発明のBの工程がその出願当時から周知の発明であることを裏付けるに足りる資料はない。

そうだとすると、審決が、原発明において、Bの工程が周知技術たることを前提に、これを無意味な限定であるとし、Aの工程にしか発明性がなく、したがつて、本願発明を原発明と同一発明であるとし、これがため本願を原出願の分割出願と認められないとして、本願に特許を付与することを否定した審決の判断は、すべて誤つた前提に基づくものであるから、違法といわざるをえない。

三 よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を正当として認容する。

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